強迫性障害:「こころ」が『安心』を求めすぎているアラーム
「ばかげている」
「やりすぎだ」
ご自身でも、そう分かっているのに、 特定の考え(強迫観念)が頭から離れない。
そして、その不安を打ち消すための行動 (強迫行為)を、繰り返してしまう。
そんな苦しさを感じていませんか。
例えば、手が汚れた気がして何度も洗う。
戸締まりを何度も確認しに戻る。
そのために、時間やエネルギーを奪われ、 疲れ果てていませんか。
それは「強迫性障害(OCD)」という、 こころが送る「安心」へのアラームかもしれません。
強迫性障害は、 あなたが「性格」や「几帳面なだけ」、というわけでもないのです。
ただ、脳内の特定の神経回路が、 少し過敏になっている状態です。
つまり、不安と安心のバランスが、 少し崩れているだけなのです。
よって、適切な治療や支援の組み合わせにより、 症状の緩和を目指すことができます。
その大切なアラームを見逃さないでください。
こんな「アラーム」があれば、ご相談ください(強迫性障害の症状・受診の目安)
「ただの癖」や「几帳面なだけ」
そう我慢しすぎないでください。
「こんなことで…」と思わないでください。
まずはお話を聞かせてください。
次のような「こころ」や「からだ」のアラームが続き、 日常生活や仕事、学業に支障が出ている場合(目安として1日に1時間以上費やされるなど) 、強迫性障害の可能性があります。
こころのアラーム(強迫観念)
- 汚れや細菌への強い恐怖(汚染恐怖)
- 「戸締まりをし忘れたのでは」という不安
- 誰かを傷つけてしまうのでは、という不安(加害恐怖)
- モノが特定の順序でないと不安になる
からだの訴え(不安な場面)
- 人前で話すと声や手が震える
- 顔が赤くなる(赤面)
- 大量に汗が出る(発汗)
- 動悸がする、口が異常に渇く
- めまいや吐き気を感じる
行動にあらわれるアラーム(強迫行為)
- 手や体を何度も長時間洗い続ける(洗浄)
- ドアノブやガスの元栓を繰り返し確認する(確認)
- 不安を抑えるため、特定の順序や回数で行動する(儀式行為)
- 不安な考えを打ち消すため、頭の中で数字を数える
早めに相談することで、 このアラームに適切に対処しやすくなり、 回復を目指せます。
強迫性障害とは
強迫性障害(OCD)とは、 ご自身の意に反して、 不合理な考え(強迫観念)が浮かび、 それを打ち消すための行動(強迫行為)を 繰り返してしまう状態です。
行為をやめようとすると、 強い不安に襲われるため、 やめたくてもやめられなくなります。
原因は「几帳面な性格」だけではありません。
脳内の不安や習慣に関わる 特定の神経回路の過活動が 関係していると考えられています。
強迫性障害は、脳機能の「状態」なのです。
似ている疾患などとの違い
- 几帳面な性格:
こだわりがあっても、本人が納得しています。 生活に支障が出るほどではありません。
強迫性障害は、本人が「不合理だ」と苦痛を感じます。 - うつ病:
気分の落ち込みや意欲の低下が中心です。
強迫性障害による苦痛が続き、 二次的にうつ状態を併発することもあります。 - 全般性不安障害:
様々なことに対し、漠然とした不安が続きます。 強迫性障害は、不安の対象が具体的です。
ご自身での判断は難しいものです。
気になる場合は受診をご検討ください。
強迫性障害の診断と治療の流れ
- 初診:
まずは、今お困りの状況をお伺いします。
どんな考え(強迫観念)が浮かぶか。
どんな行動(強迫行為)をしてしまうか。
生活への影響も、 ゆっくり丁寧にお聞かせください。 - 見立ての共有:
問診で、症状の具体的な内容や 生活への影響度を確認します。
強迫性障害の診断の考え方や、 治療の選択肢について説明します。
そして、当面の目標を一緒に整理します。 - 方針の検討:
強迫性障害の治療は、 「心理療法」と「薬物療法」が柱です。
特に心理療法が重要とされています。
ご相談のうえ、方針を決定します。
強迫性障害の治療の選択肢
強迫性障害の治療では、 「強迫行為をしなくても大丈夫」という 脳の学習を取り戻すことを目指します。
① 心理療法(曝露反応妨害法:ERP)
強迫性障害の治療で、 最も有効とされる治療法の一つです。
「曝露(ばくろ)」と「反応妨害」 という練習を行います。
- 曝露(ばくろ):
あえて不安な状況に身をさらします。 (例:少し汚れたものに触る) - 反応妨害(はんのうぼうがい):
不安を打ち消すための強迫行為 (例:手洗い)を、 「しない」で我慢します。
最初はつらく感じます。
ですが、これを繰り返すことで、 脳が「何もしなくても不安は自然に減る」 ことを学習していきます。
② 薬によるサポート(不安のコントロール)
不安が強すぎると、曝露反応妨害法(ERP)が困難な場合があります。
その場合、不安を和らげ、ERPを行いやすくするため、 お薬の力を借りることがあります。
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬):
抗うつ薬の一種です。 不安システムの過敏さを安定させます。
強迫性障害の治療では、 うつ病などより高用量が必要な場合があります。
また、効果が出るまでにも時間がかかります。
お薬には副作用の不安もあるかと思います。
よって、リスクと利益を丁寧に説明します。
そして、あなたと医師が相談し、 お薬や量を適切に調整します。
③ 環境調整・リラクセーション(安心できる時間を増やす)
過度なストレスや疲労は、 不安を強める原因になります。
まずは、ストレスの負荷を下げて、できる限りゆっくり休むことも大切です。
むしろ、負荷を下げて休むことは「逃げ」ではなく、回復に必要な「大切なステップ」と捉えてはいかがでしょうか。
もちろん安心して休める環境づくりも支援します。
回復の目安と日常生活の工夫
回復の道のりは人それぞれです。
そのため、焦らず、ご自身のペースを守ることが何より大切です。
- 初期:
まずはお薬の力も借りながら、 不安をコントロールできる感覚を育てます。
そして、曝露反応妨害法(ERP)の仕組みを学び、 簡単なところから挑戦を始めます。 - 回復期:
医師やカウンセラーと相談しながら、 ERPの練習を段階的に進めます。
「強迫行為をしなくても大丈夫だった」 という経験を積み重ねていきます。 - 安定期:
強迫観念が浮かんでも、 強迫行為をしない選択ができるようになります。
症状に振り回されず、 生活の質(QOL)が向上することを目指します。
「調子が良いから」と無理は禁物です。。
ご家族・周囲の方へ
ご本人を支えるご家族も、 どう接したらよいか悩むと思います。
一番大切なのは、強迫性障害を 「病気(状態)」として理解することです。
また「神経質」「気にしすぎ」 といった言葉は、ご本人を追い詰めます。
ご本人が一番苦しんでいます。
一方で、ご家族が強迫行為を手伝う「巻き込み」は症状の悪化や治療の妨げにつながることがあります(例:代わりに戸締まりを確認してあげる)。
なので、手伝わないが責めない関わり方を一緒に考えましょう。
「手伝わない」こと。
「でも、責めない」こと。
このバランスがとても大切です。
ご家族だけで抱え込まず、 ぜひご相談ください。
必要があれば、ご家族も一緒に受診し、 適切な接し方を相談することも重要です。
社交不安障害について、よくあるご質問(FAQ)
- これは「几帳面な性格」とは違うのですか?
違います。
几帳面な方は、こだわった結果に満足します。
強迫性障害の方は、 「ばかげている」と分かっているのに、 やめられず、苦痛を感じています。
生活に支障が出ている点が大きな違いです。- 曝露反応妨害法(ERP)は、つらくないですか?
正直に申し上げて、 一時的に不安が高まるため、 最初はつらく感じる練習です。
ですから、一人で無理やり行うものではありません。
医師と相談しながら、 「これならできそう」という 簡単なステップから、 安全に、段階的に進めます。- SRIは高用量が必要だと聞きました。
強迫性障害の治療では、 うつ病などの治療に比べ、 SSRIを高用量で、 また長期間使用することがあります。
もちろん、効果や副作用には個人差があります。
医師が状態を見ながら、 あなたに合った量を慎重に調整します- 治療費はどのくらいかかりますか?
当院は保険診療を基本としています。
診察とお薬の処方(院外処方)で、3割負担の方はおおよそ2,000〜4,000円前後です(検査内容などにより変動します)。
当院からお伝えしたいこと
「わかっているのに、止められない」
「ばかげたこと」に時間を奪われ、 「こんな自分はダメだ」と、 一人で自分を責めていませんか。
その苦しさは、 強迫性障害を経験したご本人にしか、 本当に理解できないかもしれません。
ただ、それは、 あなたの「意志」や「性格」の問題ではありません。
脳の「習慣」が、 少しだけ強くなりすぎた「状態」です。
そんな「習慣」のパターンを、 私たちと一緒に、 一つひとつ解きほぐしてみませんか。
その治療は一人だけで「頑張って耐えるもの」ではなく、「 専門家と作戦を立てて練習する」ものです。
強迫行為に費やしていた時間を、 あなたが本当にやりたかったことのために。
だから、 私たちに、その「作戦会議」の お手伝いをさせてください。
