全般性不安障害

目次

全般性不安障害:「こころ」が常に緊張しすぎている「SOS」

最近、「まだ起きてもいないこと」を心配し続けて、心が休まらない――そんな感覚が続いていませんか。
「悪いことが起こる気がして、ずっと落ち着かない」
「仕事、家族、お金のこと…次から次へと心配事が浮かんでくる」
「リラックスしようとしても、体の力が抜けない」

そんな状態が続いているとしたら、それは「全般性不安障害(GAD)」かもしれません。
全般性不安障害(GAD)は、特別な人がなる病気ではありません。
どのような人でも知らず知らずのうちに心の緊張が限界を超えてしまうことがあります。
あなたのこころが「少し力を抜いて大丈夫だよ」と送っている大切なSOSを見逃さないでください。

こんな「SOS」があれば、ご相談ください(全般性不安障害の症状・受診の目安)

大切なのは、「心配性な性格だから」と我慢しすぎないこと。
「こんなことで…」と思わずに、まずはお話を聞かせてください。
次のようなこころやからだの「SOS」が続き、日常生活や仕事、学業に支障が出ている場合は、全般性不安障害(GAD)の可能性があります。

こころのSOS

  • 常に不安や心配が続き、頭から離れない
  • その心配事を自分でコントロールできないと感じる
  • 悪いことが起こる気がして落ち着かない、ソワソワする
  • 物事に集中できない、注意力が散漫になる
  • ささいなことでイライラしやすい

からだのSOS

  • リラックスできず、常に体が緊張している(筋緊張
  • 慢性的な肩こり、頭痛、筋肉の張りがある
  • 疲れやすい、いつもだるさを感じる(易疲労性
  • 夜、寝つけない/途中で目が覚める(睡眠障害
  • 動悸、めまい、胃の不快感 など

早めに相談することで、こころの緊張がほぐれ、より早い回復が期待できます。

全般性不安障害(GAD)とは

全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder: GAD)は、特定の対象(例えば「人前で話すこと」や「電車に乗ること」)がないにもかかわらず、仕事、家族、健康、経済など、日常生活の様々なことについて過剰な不安や心配を抱き、それがコントロールできなくなる病気です。
常に「もし悪いことが起きたらどうしよう」と緊張状態にあるため、肩こり、頭痛、不眠、疲労感などの様々な身体症状を伴うことも多くあります。

全般性不安障害の診断基準(DSM-5など)

専門的な診断は、医師による問診に基づいて行われます。
国際的診断基準(DSM-5など)では、「複数の出来事または活動(仕事、学業など)についての過剰な不安と心配が、起こる日のほうが起こらない日より多い状態が、少なくとも6か月間続くこと」が中心的な特徴とされています。
それに加え、「落ち着きがない」「疲れやすい」「集中できない」「イライラしやすい」「筋肉が緊張している」「睡眠がうまくとれない」といった症状のうち、複数が当てはまるかどうかも確認し、慎重に診断されます。

似ている疾患との違い

  • パニック障害:
    突然の強い動悸や息苦しさ(パニック発作)を特徴とします。GADは、発作的というより「慢性的・持続的な心配」が主体です。
  • うつ病:
    気分の落ち込みや意欲の低下が主体ですが、GADと合併することも少なくありません。

ご自身での判断は難しいため、気になる場合は受診をご検討ください。

全般性不安障害(GAD)の診断と治療の流れ

  1. 初診:
    まずは、今お困りの症状(どのような不安が、いつから続いているか)、それによる身体症状、日常生活やお仕事への影響などを、ゆっくり丁寧にお伺いします。
  2. 見立ての共有:
    診断も大切ですが、まずは過剰な不安や緊張を和らげ、安心して過ごせる時間を増やすことを優先します。そのための目標や優先順位を一緒に整理します。
  3. 方針の検討:
    こころの状態に合わせて、GAD治療の柱である「精神療法(心配との付き合い方)」「お薬(不安の軽減)」「リラックス法」などをどのように組み合わせていくか、ご提案します。

全般性不安障害(GAD)の治療の選択肢

不安障害(GAD)の治療では、こころの状態に合わせて以下の方法を組み合わせていきます。

① 精神療法(心配との上手な付き合い方を見つける)

お薬と並行して、あるいは中心的な治療として、対話を通してこころを整理していきます。

  • 認知行動療法(CBT): GADの治療において、中核的な選択肢の一つです。「心配しすぎる習慣」や「最悪の事態ばかり考える」といった、不安を強めてしまう認知(物事のとらえ方)のクセを一緒に見直していきます。
    「心配しても仕方のないこと」と「今、対処できること」を分け、現実的な問題解決にエネルギーを使えるよう練習します。
  • 応用弛緩法(Applied Relaxation): CBTの一環としても行われ、体の緊張に気づき、それを意識的にほぐす(リラックスさせる)練習を重ねることで、不安な場面でもリラックスした状態を保てるよう目指します。

② 薬によるサポート(不安の軽減を目指す)

症状のつらさを和らげ、過剰な緊張状態をほぐすために、お薬の力を借りることがあります。

  • SSRIやSNRI(抗うつ薬):
    GADの不安症状の軽減や再発予防に用いられる主要な選択肢の一つです。
    脳内のセロトニンやノルアドレナリンのバランスを整え、慢性的な不安感を和らげる効果が期待できます。(効果には個人差があり、効果発現までに数週間かかる場合があります。)
  • 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など):
    不安や緊張を速やかに和らげる効果が期待できますが、一方で、依存等のリスクに留意が必要とされています。
    そのため、SSRIなどの効果が出るまでの短期間や、不安が特に強い時のみに補助的に用いるなど、補助的な使用が推奨されます。

お薬には副作用などの不安もあるかと思いますが、リスクにも配慮しながら、ごく少量から慎重に開始するなど、あなたと医師が相談して適切に調整していきます。

③ 環境調整・リラクセーション(安心できる時間を増やす)

「完全な休養」とは少し異なりますが、全般性不安障害の方も、意識的に「こころを休ませる時間」を作ることが非常に重要です。
なぜなら、常に緊張している状態は、それだけでエネルギーを消耗してしまうからです。
仕事の負担を一時的に減らしたり、リラックスできる趣味の時間(ヨガ、散歩など)を日常生活に取り入れたりすることも、大切な治療の一環です。

回復の目安と日常生活の工夫

ADは慢性的な経過をたどることも多く、回復の道のりは人それぞれです。
「不安をゼロにする」ことよりも、「不安に振り回されず、穏やかに過ごせる時間を増やす」ことを目標にしましょう。

  • 初期:
    まずはお薬の力を借りるなどして、過剰な不安と身体の緊張を和らげます。「リラックスしても大丈夫」という感覚を取り戻すことに集中します。
  • 回復期:
    CBTや応用弛緩法などを通して、「心配」との付き合い方を学びます。不安が浮かんでも、それに飲み込まれない対処法を少しずつ身につけていきます。
    安定期:
    睡眠・食事・活動のリズムを整え、安定した状態を保つことを目指します。調子が良くても油断せず、身につけたリラックス法や考え方を継続することが大切です。

ご家族・周囲の方へ

ご本人を支えるご家族も、どう接したらよいか悩まれることが多いと思います。 ご本人は「心配しすぎだ」と分かっていても、心配が止められない状態に苦しんでいます。
「そんなこと心配しても仕方ないよ」と不安を否定したり、「気にしすぎだ」と突き放したりすることは、ご本人を孤立させてしまうことがあります。
一方で、ご家族も一緒に過剰に心配してしまうと、ご本人の不安がさらに強まることもあります。
一番大切なのは、「あなたの心配は分かるよ」と気持ちを受け止めたうえで、「でも、きっと大丈夫」「一緒に考えよう」と、安心できる言葉がけをすることです。
ご本人が安心して「今」に集中できるよう、温かく見守ってあげてください。

全般性不安障害(GAD)について、よくあるご質問(FAQ)

不安が強いのは「性格」ですか?

たしかに「心配性」という性格傾向がベースにある場合もあります。しかし、その不安がコントロールできなくなり、日常生活に支障が出るほどの身体症状(不眠、頭痛、肩こりなど)を伴う場合は、治療によって改善が期待できる「病気」の状態と考えられます。

どのくらいで回復しますか?

回復のスピードには個人差があります。 SSRIなどのお薬の効果は数週間で現れ始めることが多いですが、不安の「クセ」に対処し、こころの状態が安定するには、数か月以上かかることもあります。焦らず、じっくり治療に取り組むことが大切です。

薬はやめられますか

状態が安定するにつれて、医師と相談のうえで、こころの状態を確認しながらゆっくりと減量・中止が可能です。
ただし、ご自身の判断で急にお薬をやめてしまうと、症状がぶり返すことがあるため、必ず医師と一緒に調整しましょう。

治療費はどのくらいかかりますか?

当院は保険診療を基本としています。
診察とお薬の処方(院外処方)で、3割負担の方はおおよそ2,000〜4,000円前後です(検査内容などにより変動します)。

当院からお伝えしたいこと

不安は、本来、私たちに危険を知らせ、未来に備えさせてくれる大切な「アラーム機能」です。
けれども、そのアラームが過敏になりすぎて、常に鳴り響いている状態が「全般性不安障害」とも言えます。
それは、とてもエネルギーを消耗し、つらい状態だと思います。
その鳴りすぎているアラームは、医師と一緒に、認知行動療法(CBT)やお薬などで適切に調整していくことができます。
アラームをゼロにするのではなく、必要な時だけ鳴るように、そして鳴りすぎないように、コントロールする術を身につけることは可能です。
まずはお話を聞かせてください。
あなたのペースを大切にしながら、過剰な心配から解放され、穏やかな「今」を取り戻すお手伝いをさせていただきます。

目次